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自分には、この少女の幸福を守る事が出来ないのではないか…
と鹿介は心配するのである。
鹿介らが庵に帰り着くと、なみと八重は無事を喜んだが、小春を見て目を丸くした。
鹿介は、傍らで緊張して身を固くしている小春を見遣り、
「実は、人狩りに襲われていたところを助けたのです。」
と少女の境涯を含めて説明した。
なみは、
「可哀相に、辛い思いをしたのですね。」
と小春の手を取り、家に上がらせ、八重が着物の埃を払ってやる。
久々に皆で夕餉の時を過ごし、旅の四方山話に秋の夜長も更けてゆく。
小春は、なみと八重にはすぐに打ち解けた風で皆の話を楽しげに聞いていたが、やがて旅の疲れか、コクリコクリしだす。
八重は、小春を自分の寝所に連れてゆくと、
「初めての場所に一人で寝るのは不安でしょう。」
と寝かし付けてやった。
小春はよほど疲れていたのであろう、直ぐに寝付いた様子である。
八重は、
「可愛い寝顔ね。」
等と微笑みながら、四半刻もせずに寝所から出てきた。
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