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ナナとサキが、助けてくれた。
サキが、ヒースを引き止めてくれたのだ。
「…………」
「…………」
ゆっくりと立ち上がり、恐る恐るヒースの顔を見る。
彼はいつもの無表情だ。
だけど……
少し、悲しい表情だった。
思わず目を下に向けてしまう。
「…私、」
私が今、一番言いたいこと。
それはね。
「私、ヒースが大好きだよ」
ごめんね、よりも。
誤解だよ、よりも。
言いたかった言葉。
わかってほしい気持ち。
「会えて嬉しいの。とっても楽しみにしてたんだよ。でも…なのに、私嘘ついたの……ヒースに内緒にしときたくて。びっくりさせたくて……」
言葉がうまく繋がらない。
「散歩してたんじゃないの。…ナナの家にいたの。佐々木くんとは、さっきばったり会っただけ。これは本当なんだよ。……ごめんね。嘘ついて、ごめんなさい」
ヒースの沈黙が、痛い。
ああ、どうしよう。
次は何を言えば――……
――…フッ
「!」
ふいに、頭に優しい重みを感じた。
視線をあげれば、微笑んだヒースが見えた。
「…わかった」
「へ……?」
「崎戸たちと一緒だったんなら……いいよ」
「っ…!」
……それって。
それって………!
「ヒース、許してくれ――……」
「きゃはぁぁぁー!!!」
私の言葉を遮ったのは、誰あろうサキの奇声だ。
「ナナ、ナナ~!大ニュースだよー!!佐々木ごときに構ってられないよぉ~!!」
『……………』
どうやらサキも、壊れたようだ。
唖然とする私とヒースを見ながら、ハートマークを飛ばしている。
「どしたの、サキ」
動かなくなった佐々木くんを放り投げるナナ。
ああ、クリームの残骸が……
勿体無いなぁ。
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