ハッピーバレンタイン!!

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*** 夜はなんて短いのだろうと、本気でそう思った。 振り返れば、体育館でひとしきり喋ったあとご飯を食べに行ったり、その後公園で遊び、通学路を行ったり来たりと散歩して、その途中でサキ達カップルにばったり会ったり、ファミレスでくつろぐナナと佐々木くん、そしてそんな二人に合流したらしい彩菜ちゃんを見かけたり…… 色んな場所をヒースと巡り、色んな話をヒースとしたはずなのだ。 それなのに、なぜこんなに、足りない気持ちが強いのだろう。 「眠い?」 「ううん、全然」 気付けばまた、私たちは学校の門をくぐっていた。 日付はもう、とうに変わっていた。 (…バレンタインデーに、なっちゃった) 2月14日。 ついに、女の子が一番ドキドキするであろう日がやってきたのだ。 意識すればするほど、チョコ入りの袋を持つ手に力が入る。 いつ渡そうかな。 そんな事ばかり考えていて、ヒースとの会話さえ途切れ途切れになりつつある時――…… 私たちの足は、ある場所にたどり着いていた。 ヒースが学校を去ってからというもの、近づくことさえしなかった場所――古い、体育館倉庫の前だった。 懐かしさが一気に込み上げて、私はヒースの手を引く。 「…この中ね、綺麗になったみたいだよ」 「中島が掃除したとか?」 「すごい、当たり!すっごく自慢気に話聞かされたの。お祓いもしたって言ってたよ!」 「お祓い?」 「幽霊が出ないように、だって。もう出るわけないのにね」 何故なら幽霊の正体は、ヒースだったのだから。 「だけど、まだ噂あるんだよ。幽霊はまだいるって、みんな言ってるの。不思議だよね」 不思議。 もう見れないのに、噂が消えない不思議。 そんな不思議を、私は嬉しく思う。 まだヒースが、学校の生徒のままでいるような気がして。 皆がそれを、感じているような気がして。 .
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