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そっと触れたその肌は、やっぱり滑らかで。
薄い水滴が指を濡らした。
私、なんて大胆なことをしているんだろう。
ヒースですら、笑うのも忘れて驚いているのに。
「嬉しいなぁ」
きっとネジがぶっ飛んだのだ。
勝手に言葉が出てくる。
「ヒースの笑った顔、すっごく好きだなぁ」
これはきっと、独り言のつもりだったのだと思う。
「ヒースが笑ってくれるなら、私トカゲになってもいいかも」
これは結構本気で言ったのだと思う。
すると、ポカンとしていたヒースが、今度はふんわりと笑った。
「…トカゲにならなくても、笑うよ」
「……!」
楽しそうなヒースに頭を撫でられ、私の熱とドキドキが戻ってきた。
「ハツキは本当に、面白い」
「か…顔が?」
「全部。…可愛いね」
タラーリ。
ぶち壊してごめんなさい。
鼻血出ちゃいました。
そんな私にトドメを刺すのは、やはり彼。
「また出た」と笑いながら、キュッと鼻筋を摘むようにして鼻血を止めてくれた。
そしてそのまま――……
「…やっぱり好き」
――……抱きしめられた。
それだけでも、混乱しそうなのに。
「佐々木の前では、鼻血出さないで」
「えっ」
「……なんか嫌だから」
今、確かに、間違いなく実感した。
嫉妬されていた事に。
独占されている事に。
「うん……絶対、絶対出さないよ」
変な約束かもしれない。
だけどこれは、私が愛されているんだと強く感じた瞬間の場面であり、言葉だった。
ヒースの心音を聞きながら、目を閉じる。
鼓動が少しだけ、速い気がした。
「ヒース、あのね――……」
もっと、速まらないかな。
なんて、調子に乗った私は、彼を見上げて言った。
「ヒースに、プレゼントがあるの」
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