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首を傾げるヒース。
予想通りの反応に、可愛いなぁと思いつつ、私は訊ねる。
「ヒース、今日は何日?」
「2月14日」
「何の日か知ってる?」
「バレンタインデー…?」
「意味は?」
「……………」
地上での生活で、一度は過ごした事のある日だが、まだ彼はカレンダーの中だけの『バレンタインデー』しか知らないようだ。
ヒースはじっくり考えた後、こう応える。
「チョコレートがたくさん売ってる日…?」
…惜しい!!
確かにそうだけど、惜しい!!
「バレンタインデーはね、チョコをあげる日なんだよ」
「店に?」
「ううん、大好きな人に!!」
言葉と同時に、頑張ってラッピングしたチョコレートを差し出した。
チョコと私を交互に見るヒースは、やがて私に回していた手を解いて、チョコを受け取ってくれた。
「これ、ハツキが作った?」
「……うん」
「凄いね」
「ナナに教えてもらったの。…今日のお昼は、これを作ってたんだよ。びっくりさせたくて嘘までついちゃったんだけど……」
チラリとヒースを見る。
私の視線に気付くと、彼は目を細めて言った。
「…びっくりした。ありがとう」
と――……
気のせいかな。
ほんの少し、ヒースの頬が染まっている気がするのは。
はたから見れば、いつもの無表情なのだけど。
そんなわかりにくいヒースの表情が、とても嬉しかった。
わかりにくいのに、わかるんだ。
ヒースが驚いてくれたんだって。
喜んでくれているんだって。
……頑張ってよかったなぁ。
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