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「ほら、いらん気持ち込めないの!!シャキッとしな、シャキッと!」
「痛っ!」
落ち込む私たちに、ナナの尻叩きが下った。
「私も、今年は二人にはあげるつもりないから。ていうか毎年、そんなに重要なイベントじゃなかったでしょ。袋入りの飴を三人で割り勘した時もあったじゃん」
「それは酷い!」
「提案したの、あんただよハツ」
「そ、そうだっけ…?」
「とにかく!渡す相手がいるんだから、義理は考えないでその相手の事だけ考えて作りなさい!」
ああ、ナナ様天使様。
前髪についているチョコレートの欠片までもが、神々しく見える。
『はい、ナナ様!』
「わかればよろしい!」
こうしてまた、たわいない話をしながらチョコ作りを開始する。
そしてサキとコリンくんのキス事情について興奮していた時――……
~♪♪♪
「あ、電話」
私の携帯電話に、着信があった。
チョコくずまみれの手を急いで洗い、電話に出る。
相手は……
「はいはいはー――…」
『もしもし』
「っ!ひっ!……ース」
『うん』
ヒースからだった。
途端に色んな意味で心臓をバクバクさせる私。
……ヒースには、バレンタインの事は秘密なのだ。
ナナとサキを見やると、二人は大袈裟に動作をゆっくりとし始める。
顔を、これでもかとにやけさせながら。
『ハツキ、今どこ?』
「ええ?!ななななんで?!」
『こっちに着いたから』
「えっ、もう?!まだお昼なのに……」
『…まずかった?』
「?!そんなまさか……!」
とは言ったものの、ぶっちゃけまずい。
今すぐ会いたいのだが、チョコはまだ刻み終わってさえいないのだ。(何分、量が多いのである)
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