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「えと、あのね今……ちょっと手が放せないというか…!」
『そう?…とりあえずハツキの家まで来てみたけど』
ええ?!
驚いて、何故か青ざめて、パクパクと親友二人に助けを求める。
ヒースとの会話が聞こえない二人は、やはりハテナ顔だ。
とりあえずスピーカーモードに――…
『……あ』
「?!」
――…した途端に、ヒースとは別の声が聞こえてきた。
『あらぁ、ひいすくん!!随分久しぶりねぇ、元気?』
……マイマザー!!!
しかもえらく声が高い。
『初希ならいないわよ~』
『みたいですね』
『あら、もしかして初希と電話中なのかしら?』
『はい』
『ちょっと代わってくれない?』
『どうぞ』
『もしもし、初希~?』
…ああ、何故こうなるんだろう。
「……何?っていうか、また占いしてたんでしょ」
『やだ違うわよ。歩と窓の外を眺めていたら、たまたまひいすくんが見えたもんだから♪』
なんて犯罪級な占い師。
我が母親ながら、恐ろしい。
『ところで初希、今って――…』
「ヒースには言わないで。秘密にしておきたいの」
『うふふ、そう言うと思ったわ~♪了解よ、じゃあ頑張って!ひいすくんに代わるわね』
受話器の向こうで、母親とヒースが短い挨拶を交わしているのが聞こえた。
そしてまた、ヒースの声だけが聞こえるようになる。
ナナとサキはいつの間にか動く事も止めて、静かにスピーカーモードの携帯電話に耳を傾けていた。
『崎戸や藤谷と一緒?』
いきなりビンゴなヒースに、私だけでなく二人もビクリとする。
ナナは首を縦に振り、サキは首を横に振った。
…どうするべきなの?!
一瞬のうちに何度も迷ったあげく、私はこう言った。
「…一人だよ!散歩してるの!」
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