止まり木

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手紙が届いた。 10年近く付き合いのある、 女友達からだった。 手紙には、 「今度結婚することになりました」 と書いてあった。 メールですれば済むことなのに、 わざわざ、手紙で送ってくるのが君らしいと思い、自然に口元が緩んだ。 昔からたまに、 手紙を送って来た君は、 僕がなんで手紙なの?と聞くと、 「いつもメールだと味気ないし、たまには手紙もいいかなぁって思って」 友人として見ているはずの僕でもドキッとするような笑顔で答えていた。 君と最後に連絡を取ったのはいつだろうか、 もう2年以上前だったような気がする。 その連絡の無かった間に、 将来を共にする人を見つけ、 今度結婚するんだろう。 君からの連絡で初めて幸せな報告を聞いたせいか、 いまいちピンとこない、 僕は何度も「結婚」という文字を読み返した。 君が僕に連絡してくるのは決まって、 付き合っていた彼氏と別れた後だった。 愚痴、未練、その他もろもろの感情をひたすら僕にぶつけてきた。 僕はいつもそれを黙って受けとめるのが役目だった。 そうして、好きな人が出来るとピタって連絡が来なくなる。 別に僕から連絡をすることは無い。 だって、連絡が来ないって事は君が幸せだってことだから。 そんな、ちょっと変わった友人関係がもう10年以上続いていたが、 この関係も、もう終わりだろうか。 手紙に「幸せになります」と書いてあるように 君が満たされていたら僕に連絡が来ることがもう無いだろうから。 そうだ返事は手紙で返そう。 僕が君へ書いた最初で最後の手紙。 なんて書こうかな? 一番伝えたい言葉だけ書こう。 「いっぱいいっぱい幸せになってね」 僕は、短く書いた手紙を見つめて心の中で呟いた。 もし辛いことや悲しいことがあったら、 その時は連絡してね。 君が羽を休められるように、 今までと同じように君の止まり木になるから。
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