ランチ

2/3
前へ
/50ページ
次へ
「今日もいつもの店か?」 ビルの出口へ向かう僕に同僚が声をかけてきた。 「そうだよ」 短く答える僕に同僚が、 ため息混じりに言う。 「いつもいつも同じ店で飽きないのかねぇ」 僕は苦笑いしながら 「ほっとけ」 と答えながらも歩みを止めない。 ランチタイムは限られてるし もたもたしていると店も混んでしまう。 僕が毎日のようにランチタイムに通う店は、 どこにでもあるような普通の喫茶店。 ランチメニューもほぼ毎日同じものが 4種類くらい。 普通であれば、 何回か行けばしばらく行かなくなってもおかしくない。 でも、 僕はこの店を知ってからの約半年毎日通っている。 しばらく前までは、 同僚が数人付き合って一緒に来ていたが、 みんな飽きてしまい、 最近は一人で行くことがほとんどだ。 きっと同僚達は、 変わった奴とでも思っているようだが、 別に僕はここのランチメニューが気に入ってる訳じゃない。 僕がいつもと同じように店のドアを開けると、 ちょうど、テーブルに水を運ぼうとしていた君と目が合った。 君はいつもと変わらぬ笑顔で言ってくれる。 「いらっしゃいませ」 そう、 僕はこの笑顔が見たくて この店に通っている。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加