約束

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そこで初めて君は僕の目をまっすぐに見つめた。 「彼女とか出来たか?」 真剣な君の表情に 「えっ」 言葉に詰まる。 「出来てないなら約束守る」 そこで色白の君の肌が真っ赤になった。 約束… 僕は三年前を思い出した。 三年前、僕がこの町を出る日に君は今日と同じように突然現れた。 そうして僕に まるで運動会の宣誓のように 「もし、次帰って来たときに彼女が出来無かったら私がなってやるから、がんばれよ」 そんな君の変わった激励に僕は 「その時はよろしく」 と笑顔で答えたのだが。 その時、僕はあることに気づいた。 僕はたしかに母に今日帰るとは伝えたが、 何時に着くとは伝えてなかった。 君はいつから待っていたんだろうか。 この雪が舞う年末の寒い日に。 そこまでして待ってた君を思うと あの三年前の約束はそれだけ本気だったんだということに僕はようやく気づいた。 その時 僕の中で君に対する気持ちが変わった。 今までは君は異性の親友。 今日からは愛しい人へ。 僕は気づいたら 少し冷たくなってる君を抱きしめていた。 そうして、 君へまだ言ってなかった 言葉を 「ただいま」 一瞬 体が強張ったようだけど 君は僕に体を委ねて恥ずかしそうに 「お帰りなさい」 少し女の子らしく返事した。 そんな君へ僕は心の中で呟いた。 次の約束は 僕がするよ。 これからは 君を離さない。 年末の慌ただしい駅の真ん中で僕は君を強く強く抱きしめた。
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