40人が本棚に入れています
本棚に追加
/130ページ
「はあっ、はあっ」
少年は震えることしか出来なかった。
少年の頬の傷がなにかに怯えるかのようにじくじくと痛み、ボタボタと赤い液体が肩のところに染みを作っていた。
「ふん、もう終わりかァ? 下らねェ」
どさりと投げ出された女性の胸には大きな穴が空いており、空虚を見つめる目は既に役目を終えていた。
「かあ……さん?」
頬の痛みがこれを現実だと認識させる。
少年は先まで血の通っていた母の手を握りしめた。
「おい餓鬼ィ、ちったぁ泣き叫んだりしねェのかァ? 母親が目の前で殺されてんのによォ」
母親を殺害した男は、ピアスを大量に付けた舌を長くのばし、大口を開けて笑う。
「それとも……」
男は少年の髪を掴み、持ち上げた。
「クトゥルフ軍戦闘員隊長、このダゴン様が怖くて声も出せねェか」
「うぐ……」
少年の薄いクリーム色の髪がブチブチと音をたてる。
最初のコメントを投稿しよう!