プロローグ

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「はあっ、はあっ」 少年は震えることしか出来なかった。 少年の頬の傷がなにかに怯えるかのようにじくじくと痛み、ボタボタと赤い液体が肩のところに染みを作っていた。 「ふん、もう終わりかァ? 下らねェ」 どさりと投げ出された女性の胸には大きな穴が空いており、空虚を見つめる目は既に役目を終えていた。 「かあ……さん?」 頬の痛みがこれを現実だと認識させる。 少年は先まで血の通っていた母の手を握りしめた。 「おい餓鬼ィ、ちったぁ泣き叫んだりしねェのかァ? 母親が目の前で殺されてんのによォ」 母親を殺害した男は、ピアスを大量に付けた舌を長くのばし、大口を開けて笑う。 「それとも……」 男は少年の髪を掴み、持ち上げた。 「クトゥルフ軍戦闘員隊長、このダゴン様が怖くて声も出せねェか」 「うぐ……」 少年の薄いクリーム色の髪がブチブチと音をたてる。
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