冬の序詞

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▽ (…大丈夫か。 間に合ったな。) もうじき着く。 一応、駅からも少し急いだ。 家から学校までは電車と徒歩で通う。 久しぶりだったが、途中で見るものは特に変わり映えのしないものばかりだった。 人間の世界は、いや、少なくともオレの知る限りの日常は、変わることに抵抗を覚えている。 たかが夏休みを1カ月過ごすくらいでは、たいして変わるものなど無いのだろう。 毎日同じ時刻に、同じ事を繰り返す日々に戻ったのだ。 時間の流れは変化を生むかもしれないが、時計は不変しか示さないようにも思えた。 しかし、その中で変化に憧れるのもまた、人間なのだろう。 それは、とても滑稽なことに感じた。 加えて言うなら、オレもその不思議の一人だ。 退屈な毎日に、少なからず不満を感じている。 そう思いながらも歩き続け、夏休み明け第一日目、無事登校完了。 久しぶりに見る、自分の通う学校だ。 今更、感じることも、さして無い。 足早に校舎に入っていった。
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