冬の序詞

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▽ 時計の針は、意外に余裕ある時間を指していた。 (案外、間に合うものなんだな…。 直接すぐに体育館へ向かうほどでもないか。) だから、教室に向かうことにする。 といっても、本来はそれが当然なのだけれど。 今日からまた、"学校の一ノ瀬 唯"として振る舞わなければならない。 それは、もう一人の唯だ。 教室に向かいながら、気持ちを切り替える。 もう一人の唯を呼ぶのだ。 大げさに言えば、自分を演じることになる。 久しぶりだが、感覚は鈍っていないはずだ。 そうして、目の前まで来た。 準備は完璧。 人当たりのいい唯が、教室の扉を開く。
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