冬の序詞

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長い。 どれだけ走っただろうか。 道の光は無限に続くかのようだった。 一度も振り返ったりはしない。 何もないことが自然とわかったからだ。 もしかしたら、通った後の道から、世界は崩れているかもしれない。 ふと空を見上げると、漆黒の周りに光輪が輝くように見えた。 空を少し照らしだす。 予兆。 そんな感覚が伝わってきた。 ここには、オレしか存在しない。 ならば、これはオレの世界なのか? オレ次第で、ここは変わるのか? それは違うだろう。 オレは、月に導かれるだけだ。 この世界を、オレは知らないから。 つまりは、月がこの世界。 しばらくして、オレはもう歩いていた。 走りつづけていたから、少し辛いのもある。 それに、延々と続く一本道や、殺伐とした空気には、さすがに気も滅入いってきた。 それでも、道標がないよりは、遥かに良い。 月の光が、きっと救いなんだろうな。
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