冬の序詞

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さらに長い道を行き、坂道に差し掛かった。 上り切ると、道は左に折れている。 もうすぐだ。 予感がする。 ゴールとなるべき場所は、真っ白に光ってよく見えない。 だが、道の光は中へ続いていた。 つまり、真っ直ぐに駆け出せばいいんだ。 やっと、終われる。 その光について行った。 ゴールに駆け込んだ。 すると、視界に光が広がって、目の前が真っ白になる。 虚無になる。 まるで意識も白に染められるかのような感覚だ。 そこは、うって変わって白の世界。 欠けた、虚無の世界。 道は消えた。 そうして長いの間、立ちつくすことになる。 だって何もなかったから。 道の光さえも。 そこで得たものは、覚醒の予感だ。 この世界での意識が、ゆっくりと消えていく。 消えていく意識の中では、漆黒の月が少し見えた気がした。 光を放ったのかも。 あの月がやっと、生まれたのだろうか。 唯一のリンクが作られた。 この夢の世界と、あの現の世界との。
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