8人が本棚に入れています
本棚に追加
/169ページ
▽
痛い。
ひどい頭痛がする。
朝日さえも、歪んで見えたかもしれない。
目覚めは、最悪だ。
幼いときから、時折見る夢に起こされた。
悪夢と呼ぶべきだろうか。
夢はそうでもないが、少なくとも目覚めから考えれば、そうに違いない。
「…痛ッ…。またかよ…。」
(最近多い。
高校に入ってからかな。
これは、もはや持病のようじゃないか。)
ところで、今日は、夏休み明けの始業式。
全国の学生の9割が、今朝は憂鬱だろう。
当然、オレもそのうちの一人だ。
重い体を無理やり起こして、ベッドから出る。
空腹が朝食を求めているのがわかる。
学生になってから常々思っていたことだが、家の構造からして、オレの部屋はリビングから一番離れている。
そして、長い廊下や階段は、いつもオレを同じ思考へと導くのだ。
(ここまで無駄に広くする必要は無かったはずだろ。
オレしか使わないんだかさぁ…。)
そう。
この家には、俺しか住んでいない。
オレの親である一ノ瀬 賢一郎と涼子はとてつもない仕事人間で、今は海外にいる。
父親の方は、昔からずっとそうだったが、母親もオレが十歳ほどになってから、向こうに行くことになった。
デザイン関係の会社を担っているらしく、海外にいる方が仕事に好都合なのだと言っていた。
それ以上、詳しくは知らない。
オレは、ついて行こうと思わなかった。
それらのことが理由となって、オレが毎朝長い廊下を歩いているのだと思う。
悔やんではいない。
最初のコメントを投稿しよう!