冬の序詞

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▽ 時間に追われて用意を始める。 いちいち時計を気にする朝は、嫌いだ。 もっとも、それを好む人間もいなさそうだが。 これからまた、そんな朝を過ごしていくことになるだろう。 その初日から、嫌気が差し始めたかもしれない。 しばらくして学校へ行く準備を整え、玄関に立つと、棚の上に何か札があることに気がつく。 遠目でもすぐにわかった。 棚の色と、見事にミスマッチだ。 雰囲気もズレてる。 「なにこれ…。 カードか…? "ⅩⅦ"って何なんだ…。」 見なれないカード。 オレに見つけられるために、そこにあったようだ。 手にとって、じっと眺めてみる。 いや、見なれないが、どこかで見た。 数日前に同じものをた気がする。 (たぶんこれ、奈々華さんのだよな。) 夏休みのいつかだった。オレを占うと言って、何枚ものカードを見せてくれた事を思い出す。 (たしか番号ごとに絵柄と暗示事が違うんだった。 これは…なんだっけかな。) 絵柄は見ても分かりづらいものだった。 そういえば、あの時も番号で覚えた気がする。 (あの時は、何のカードだったんだっけ…。)
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