436人が本棚に入れています
本棚に追加
そんなこんなで、放課後になり。朔太郎が本を片手に開いて帰ろうと昇降口まで来て、固まった。
「幣原……?」
昇降口に堂々と仁王立ちする奈々。行き交う生徒も邪魔そうにしている。
「幣原がまた何かやってるぞ……」
「誰を狙ってんだ……」
「可愛いなぁー……」
「止めとけ、止めとけ。幣原に振られた男は星の数だって」
「それに可愛いのは見た目だけ」
そんな潜められた声が多数、朔太郎の耳に入ってくる。
「……よし、図書室で時間を潰そう」
くるっと向きを変えて朔太郎がその場から逃げる。
「奈々ちゃんはしつこいからムリ、ムリ」
誰かとすれ違い、そんなことを言われた。振り返ると篤樹の背中があったが、朔太郎とは何の接点もなく誰かも分からなかった。
最初のコメントを投稿しよう!