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ハコを出ると、静寂ばかりが耳についた。まだ冷めやらぬ興奮が、彼女の中で炎のように盛っている。
「アツがリズムキープ下手すぎるんだよ!」
「うっせーな、このチビ」
「あんだと!?」
「止めろ、お前ら。無事終わったんだからいいだろう」
彼女と一緒に歩く少年らが騒がしい。しかし、余韻の抜けぬ彼女には届いていなかった。今日は、いいライブだった。
ブッキングに目を惹くバンドはなかった。拙いところも多々あった。出来るなら代わってやりたい衝動もあった。だが、確かな熱を感じられた。
それぞれの思いを乗せて。それぞれの思いを重ねて。紡がれる音に「今」を感じた。
「奈々サマ、この後バイトだから俺はこれで」
最年長にして、フリーター。ベースを担いだ19歳のエイジが彼女に言ってから小走りで駅構内に消えた。
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