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「――幣原奈々。
趣味は音楽鑑賞(ロックのみ)とライブハウス通い。成績は上の下。男勝り。告白し、振られた男は星の数。独り身。スリーサイズは上から――」
「いや、いいから」
彼は友人の頭を小突いて、止めさせた。眞鍋朔太郎。高校二年、帰宅部。身長191センチ。体重71キロ。特技は歩きながら本を熟読しつつ、会話をすること。
「で、何で幣原情報が欲しいなんていきなり?お前、見た目は肉食だけど中身は草食じゃん」
「いやな、いつものように本を読んでたらいきなり幣原に呼び止められた」
「あの、幣原に?ロック以外に興味を全く抱かないと言われる幣原に?」
ああ、と朔太郎は答えてから教室を見渡す。通学している公立高校の二年A組教室。朔太郎は教室窓側の後ろにいて、奈々は廊下側一番前の席にいる。
「それで、何て?」
「いやな……読んでいた本に幣原も興味持ったみたいで。内容を詳しく聞かれて、答えて、それで意見を求められて、答えて、そうしたら……」
「そうしたら?」
友人が生唾を飲み、朔太郎を見つめる。
「今夜、付き合ってくれって」
「マジでか!?いいなぁ……。黙ってりゃ可愛い、あの幣原と……」
うなだれる友人だが、朔太郎は難しい顔をする。端折って話したが、あのやり取りを聞いたら、やはり幣原か、とでも納得するだろうかと。
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