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あの、やり取り――。
そう、あれはロマンティックなものとは程遠かった。
『ちょ、ちょっと、眞鍋!』
登校途中の十字路で、いきなり奈々に声をかけられた。
『ん?幣原……?』
いつものように本を熟読しながら、歩いていた。これまでロクに話したことのなかった相手だったから、本から顔を上げ――もとい、背が高いので本を閉じて応じた。
『その本……!?それ、どうやって手に入れたの!?』
朔太郎の持っていた本。『ミスター・ヒーロー』というタイトルの分厚いハードカバーだった。奈々は朔太郎ではなく、閉じられた本を凝視していた。
『ネットオークションで』
『っ!?そっか、その手があったぁ……。内容、内容はどう?』
がっつり奈々は食いついていたが、朔太郎は終始困り顔をしていた。
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