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『まぁ、色々書かれているが……。この名曲の裏に、という章が印象的だったな』
『名曲?ネバー・エンディングについて!?』
『お、当たり……。よく知ってるな』
『だってファンだもの!それで?何なの、ネバー・エンディングには何が隠されてたの!?』
『一般にネバー・エンディングは難解な曲として認知され、ミスターが難産したとも知られている。しかし、ここにはある意味が含まれていた。ネバー・エンディング――このタイトルは決して終わらないこと、と直訳される。ミスターにとって、決して終わらないこととは何だったのか。曲が作られた時、ボーダーレスは解散危機の真っ只中にあった。スティーブとミハエルが不和。ヨンヌが事故に遭い、決して仲良しバンドではなかったがボロボロの船のような不安定さだった。ファンという大切な宝物の、たくさん積まれた船……。そして、夏の終わり。ミスターは決断を下した。ボーダーレスの解散を。そして、最後のレコーディングをする。ラストシングルのカップリング。それこそが、ネバー・エンディング。ミスターは、もしかしたら何かに願ったのかも知れない。――終わりなどいらない、と』
本の中から一部を読み上げ、朔太郎が奈々を見る。すると、奈々の目が潤んでいた。朔太郎には感動する要素が分からない。
『辛かったんだね……。きっと、苦しかったんだね……。でも、本当は終わらせたくなくて……』
意外なことに奈々は本格的に泣き出していた。
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