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『そんなに気になるなら、貸すか?』
『いいの?でも眞鍋だって読みたいんじゃない?』
ぱっと奈々が顔を上げる。涙は嘘のように消え去り、爛々と目を輝かせる。
『いや、もう全部読んだし』
『本当?じゃあ貸してもらうね。ずっと欲しかったんだけど、これって貴重でなかなか入手出来なかったんだよね~。嬉しい~』
喜びを噛み締めるようにしながら、奈々は受け取った本を抱きかかえる。
『……じゃ、読み終わったら適当に返してくれ』
『あ、眞鍋、待った』
さっさと行こうとした朔太郎を奈々が捕まえる。
『どした?』
『これ読んで、どう思った?』
その問いに朔太郎は少しだけ難しい顔をした。
『どう?そうだな……。率直に言えば、考えさせられたかな。人生から転落した父親、若くして亡くなった異母の弟。現実を目の当たりにしながらも、ミスターは自分を貫いてきた。自己中とも捉えられるけど、俺は彼の意志の強さだと思った』
朔太郎が真面目に答える。
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