ストーリーバトン

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暖かい光に、思わず眠ってしまいそうになる。 窓際の席は、学生の特等席である。 そんなことを考えていると、先生の困ったような声が耳に入った。 「これは、なんて読むのかな。…じ…?」 入学式が終わり、教室で担任の先生に名前を呼ばれる、この儀式。 時仁。 今までの人生の中で、苗字を一発で当てられることはなかった。 前後の席の子たちも、首を傾げたり、きょろきょろ見回していたりする。 毎年毎年、これが結構、煩わしいのだ。 一人ならともかく、先生全員に言わなくちゃいけなかったりする。 私は小さくため息を吐き、手を顔の高さまで持ち上げ、言う。 「トキトウです。トキトウ、アカネ」 「あー、トキトウね。先生読めなかったなぁ」 ははは、と、先生は声を上げて笑った。 周りの子たちが、一斉に私を見つめてくる。 それが妙に恥ずかしく、私は唇を少し噛み、俯いた。 (sahoru)
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