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「ーーー!?」
見知らぬ男が、自分を見下ろしていたことに気付く。
「だ、誰…?」
「……」
男はその質問に答えずに、よく焼けた魚を差し出す。
少女が受け取るのを確認してから、勢い良く立ち上がった。
「…ここにいろ」
「え?」
「動くな」
首を縦に振った途端、男の背後から5体の鬼が飛び出す。
「見つけたぞおぉ!」
「久々の獲物だ!」
「女は生け捕れ!」
口々にそんなことを叫びながら、勢い良く腕を振り下ろした。
ーーバキッ!!
「…ん?」
「な、何だと?」
鬼達が砕いたのは、焚き火に使われていた薪だった。
「それだけか?」
頭上から聞こえた声に、鬼達は空を見上げる。
夜空には、少女を抱えた男が空中に浮かんでいた。
「その女を寄越せ」
「…何故だ?」
「決まってんだろう。喰うためだ」
その言葉に、他の鬼達が次々に同意する。
「若い女は美味い」
「その血肉が我らの糧だ」
「ーだから寄越せ」
鬼達の言葉に、少女は怯えた。
「いっ…イヤ…!」
その様を見た男は、空いている右手で腰の刀を抜く。
「何だ?」
「一人で俺たちと戦おうってのか」
「しかも片手だと?」
「ふっ、ふざけんな!!」
その中で一番強そうな鬼が前に進み出た。
「…貴様らなど、片手で十分だ」
その言葉に鬼達はキレる。
「貴様あぁ!」
「ぶっ殺してやる!」
殺生丸は余裕だった。
まずは一閃して、二体の鬼の胴体を切り離す。
続けてもう二体の腹を切り裂いた。
「ぎゃっ!」
「ぐわあぁっ!」
一瞬で、目の前が血の海になる。
少女を抱えたまま、最後の鬼に刃先を向けた。
先ほど「ふざけるな」と怒鳴った鬼だ。
「…貴様で最後か」
「ひ、ひぃっ…」
「ーー死ね」
「う…うがあああッ」
…バシュッ!
大きく振り上げられた腕を交わし、間合いを詰める。
そしてがら空きの腹に刀を突き刺したーー。
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