天国からの逆転(前編)

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11月5日 午後2時  地方裁判所第6法廷 ―冒頭陳述― 裁判長 「ただ今より被告人、金成月美に対する審理を始めます」 御剣 「検察側、準備は出来ている」 成歩堂 「弁護側、準備………」 リューイチ 「ミャーっ!!」 成歩堂 「みゃ…みゃあ?」 春美 「こらリューイチ、おとなしくして!」 成歩堂 「もしかして春美ちゃん、子猫を連れてきたの?」 真宵 「だって飼い主がみつからないんだもん…」 裁判長 「コホン!気をとりなおして検察側、事件について説明して下さい」 御剣 「うむ」 御剣 「被害者は金成ニハ、69歳。蕎麦を素材にしたオリジナル食品の製造販売で巨万の富を築いた人物だが10年前に体調を崩し社長の座を退き自宅で療養に励んでいたようだ」 御剣 「11月4日午後8時20分、天下そば御殿と呼ばれている金成ニハの自宅から……」 月美 『父が死んでいる!』 御剣 「…との110番通報が入った」 御剣 「通報者はこの事件の被告人、金成月美。金成ニハは寝室のベッドに横たわった状態で息絶えていたそうだ。死因は気道閉かんによる窒息死。全身に水ぶくれと発疹(ほっしん)が多数あり典型的なアナフィラキシーと考えられる」 真宵「花火タクシーって何?」 成歩堂 「そうじゃなくてアナフィラキシー。蜂の毒や食べ物などが原因で起こる急性アレルギー反応のことだよ。重度のアレルギー患者は、ごく少量で死んじゃうこともあるんだ」   御剣 「その金成ニハは10年前から重度のそばアレルギーで苦しんでいたらしい」 裁判長 「そばアレルギー?しかし金成ニハはウマそば一番で有名な天下そばの会長だったのでは?」   御剣 「それまで何ともなかったのにある日突然、特定の食品を受け付けなくなる…それがアレルギーの恐ろしいところだ。」 御剣 「当然、そば粉が大量に舞う会社で働けるはずもなく苦渋の思いで社長の座を明け渡したらしい。そばで大儲けした男が、そばに苦しめられるとは何とも皮肉な話しだがな」 御剣 「かつて、そば粉の入った和菓子を誤って食べ意識不明の重体に陥ったこともあるとか…それ以降、そばを見るだけで蕁麻疹(じんましん)が出るようになったらしい…そばアレルギーは食べ物アレルギーの中でも別格に危険なものだと言えよう!」  
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