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「んっ……」
目の前で濃厚なキスを交わす男女。ここが学校の保健室だということも忘れ、すっかり2人だけの世界を作っている。
私はただそれをア然と見ているしかできなかった。
私よりも色気があって、素敵な女性に、夢中で唇を重ねているのは何を隠そう、私の彼氏なのだから。
具合が悪くて授業を抜けてきた私に、追い打ちをかけるような出来事。
彼、啓介君は私の初めての彼氏だった。高校に入って出会い、恋をした。だけど整った顔立ちと、長身な上に引き締まった体。女の子が放っておくはずがない。
数多いライバルと戦いながら告白したら、意外にもあっさりと受け入れられた。
最初こそ涙ながらに喜んだものの、啓介君には彼女と呼べる女の子はたくさんいたのだ。
彼の特別には誰もなれない。
それでも「彼女」という肩書きが嬉しかった。悲しい片想いもいつかは実ると信じて、女の子と歩く姿、抱き合う姿、ある時はホテルに入る姿も見たっけな。
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