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『昔々あるところに、一人のお姫様がおりました。』
ありきたりなナレーションが劇の始まりを告げ、緊張が一気に高まる。
『しかし、お姫様にはある秘密がありました。それは、実は姫は男だったのです。』
姫役の茜は「頑張ろうね」っと私に声をかけると、舞台へ出ていった。
「私は今までお母様の言うとおりに、女として生きて来た。しかし、これでは恋しても結婚することができないでわないか。」
姫になりきり、演技をする茜。
「私はどうしたらよいのでしょう……。」
「決まっているではないですか。」
舞台裏から一人の女の人が出ていく。
「お前を心から愛し、秘密を一生守りとおす者を探せばよい。」
「お母様……。
しかし、そんな方がいるのでしょうか?」
姫がしゅんとすると母親は手を大きく開き、声を張り上げる。
「姫、何もする前から諦めてはいけません。しかし、不安になるのは当たり前……。
だから私が手伝ってあげましょう。」
「お母様、一体何を?」
母親はニヤリと笑う。
「明日あなたを眠らせ、塔に閉じ込めます。」
母親は言い切る。しかし、姫の顔は一気に青ざめる。
「何故そんな事を!!!」
「お伽話みたいなものですよ。
あなたのために自ら危険の中に飛び込み、救い出せる程の愛と勇気を持つ者ならばきっと……。」
母親はそう言うと「今から準備に入ります。」と言い、去って行った。
「そんな……。」
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