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「もうっ!仕方ないなぁ!」
その声が聞こえた瞬間、僕の視界は赤に染まった。
「あっ葵ちゃん!?」
「うっさい。黙って巻かれてろ。」
そう言って葵ちゃんは僕にマフラーを巻き付けてくる。
昔から葵ちゃんは僕に優しかった。素直じゃないし、ついからかったりもするけど、絶対僕を見放さない。
そんな葵ちゃんを好きになった。
「このマフラーフワフワしてる。」
暖かいマフラーに感動しながら、僕は自分の青いマフラーをとった。
「茜も次からはこういうマフラー巻きなさいよね。」
「うん。ありがとう。」
笑顔で御礼を言えば葵ちゃんはほんのり頬を染めていた。
「どういたしまして。」
素っ気ない返事。まったく素直じゃないんだから。にしてもさすがに寒そうだから……
「じゃあせめて葵ちゃんはこれ巻いてよ。」
そう言って僕は葵ちゃんに青いマフラーを巻き付けた。
「薄いかもしれないけど、ごめんね。」
「悪くない、大丈夫だ。」
その言葉に胸をほっとなでおろす。
「本当?よかった。」
僕はそう言って歩き出した。するとその少し後ろから確かに聞こえたんだ。
『ありがとう……。』
素直じゃないから絶対に言ってくれない5文字が、小さな声で……。
その瞬間。僕の顔はマフラーみたいに真っ赤に染まった。
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