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「お前さ、街に行って来い」
「………は?」
部屋に入って座る前にそう高杉さんに言われてしまったから、変な格好のまま固まる。
「ちょ、何だよいきなり晋作!」
「部屋にずっといると腐っちまうだろ?だから、街にでも出て気晴らしにでも行けばいいだろ」
「気晴らしって…一人で!?」
「まさか。護衛はつけるさ。」
「……だけど…」
「外に出れば元の世界に帰る何か見つけるかもしれないし、自分の着物くらい買ってこい」
「き、着物って!そんな高価なもの買うお金なんて持ってないです!」
彼らの会話のキャッチボールに滑り込んでそれを止める。
コートのポケットにいれておいた500円くらいしか手持ちが…
……………ん?
コート?
そういえば制服は着てるけど、私のコートは?
「小春さん?どうかしたかい?」
「わ、私のコートはどこにあるんですかっ?」
「……コート……?」
「あっと~、羽織るやつです!黒い厚手の!」
「あれはコートというんだね」
「で!コートは?」
「俺が斬った!」
「……はあ!!?」
斬ったって!
斬ったって、コートを?
「じゃ、じゃあコートのポケットに入っててた小さな時計は!!!?」
「時計…?そんなもの入っていたかな?」
桂さんが腰をあげて後ろの引き出しをあさり始める。
その後ろ姿を祈るように見つめる。
そしてそんな私を見つめる高杉さんの視線は気づくはずもなかった。
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