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「うわぁ…」
「好きな物を選んでいいよ。」
「本当ですか?」
目をキラキラさせて彼女――小春さんは着物を選び始めた。
「わざわざ買わなくても、その辺の同じような年頃の娘から借りればいいだろうが。」
つまらなさそうにお茶を飲みながら晋作が言った。
「着物を着た事がないっていうんだから、どうせなら新しい方がいい記念になるじゃないか。」
「あまり深入りするなよ、すぐ帰すんだからな。」
「それはこっちのセリフ。」
「はぁ!!!?誰があんな異時代の小娘!」
「何や楽しそうだのぉ、晋作」
廊下からひょっこり顔を出したのは、この呉服屋の主人、市村佐々木之助。
「佐々爺、お久しぶりです」
「おお。お前らまた人斬ってもろおた金で着飾りに来たんか?」
「相変わらず口が悪りぃな、佐々爺。今日はあいつの買い物だよ。」
お松が芸者の華衣装を此処から取り寄せているのが縁で、藩士の着物を良くこの佐々爺に作ってもらっている。
口と頭が堅い爺さんが晋作が指差した方を見る。
「ほう、見ない顔じゃのぉ…
小五郎か晋作が買ったんか?」
「ぶふっ……ちがっ…違いますよ、訳あってしばらく藩邸で預かる事になっているんです。」
お店のお針子と楽しそうに会話をしながら小袖を選んでいる小春さんは、異時代から来たとは思えない。
普通の娘さんに見える。
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