1.眠れぬ蒼い夜

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 問いかける声がかすれる。  この子は一体、何者なんだろう。冷たい汗が背中を伝う。 「まあ、あんなのを目の前で見ちゃったら誰でもそうなるよね」 「なぜ、知っているの? あなた、誰?」  おかしい。  知らないはずの少年が、私のことを何もかも知っているようで、気味が悪かった。  目の前の彼はストーカーという言葉とはほど遠いほど、清らかに見えるというのに。  少年は、怯える私を不思議そうに見つめ返した。  ――ああ、どこかで見たことがある。  私は突然そう思った。  彼の瞳には見覚えがある。  でも、どこで? 「俺、見てたんだ。あの日、あなたが警察に連れて行かれるまでずっと」 「見て、た?」 「うん。野次馬っていうのかな。すごい騒ぎだったし……車、ぐちゃぐちゃだったね」 「やめて……」  私は弱々しく訴えた。  お願い、やめて。思い出させないで。  一ヶ月前からずっと、夜毎に私を苦しめる忌まわしい記憶を。何度も脳裏に蘇って私を揺さぶる、恐ろしい映像を。  思い出さないように、振り返らないように、しているのに。  それなのにどうしてこの少年は、暴こうとするの? 「……ごめんなさい。あなたを苛めるつもりなんてないよ。初めて事故現場ってやつを見たから、つい」
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