1.眠れぬ蒼い夜

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 まるで私の心が読めるみたいだ。  それとも、私が心を読んで欲しいと訴えているのだろうか。  こちらを覗き込む二つの瞳は恐いくらいに透き通っていた。汚れをよせつけない光、はねかえす鏡。 「でも、もしそうだったとしても、一人で抱えてちゃいけない。このままじゃ、あなたは消えてしまいそうだ」  私が、消える……?  どういう意味だろうか。  私が、夜を歩く「私ではない私」に変わっていってしまう、とでもいうのだろうか。 「痛みが、あなたを侵しはじめている。もう……壊れてしまいそうだよ」 「どうしたら、いいの?」  少年の言葉に、私は問いかけた。  壊れたくはない。  私は、まだ生きていたい。 「俺が、半分引き受けるよ」 「半分……?」 「そう。半分なら、お互い分けあえる」  それは不思議な提案だった。  一体どのようにしてこの胸の痛みを半分でも消そうというのか。そもそも、どうして彼が私の傷を引き受けようとするのか。  蒼い夜に邪魔されて、訊くこともできない。  それでも、彼の言葉は甘く響き、私は抗えなかった。  ひとつの痛みを、傷を、二人で分け合う。そんなことがもし本当にできるなら、彼にすべてを任せてしまいそうだ。 「右手を出して」  導かれるままに差し出した手に、彼の長い指が絡んだ。
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