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―――
病院から脱走したモリス伯爵が、ルイ様の命を狙いソフィー様がルイ様の盾となって亡くなられたという一報を受けて、警察へと駆け付けた私が目にしたのは、不思議な光景だった。
薄暗い一室の中でソフィー様の遺体を抱き締め、嬉しそうにその耳元へ囁き続けるルイ様の姿。
憎んでいた筈のルイ様を守って下さったソフィー様を守れなかった自分が、呪わしい。
何故、御二人の傍を離れてしまったのか。
――悔やんでも悔やみきれない――
私は誓った。
ルイ様の笑顔を見守る事を…
―
―
―
あれから一年。
今日もルイ様は白い部屋で、ソフィー様を模した人形に嬉しそうに語りかけている。
窓に映る私の姿にも、クロード様の姿にも気付かない――!!
「ロイ、母様が守った父様は…僕が守るよ…僕が守ってみせる。行くぞ!」
「御意」
本日、クロード様が正式にゴッドフリード伯爵家の当主となられた。
前を歩く小さな背中。
クロード様は、今度こそこの手で守り抜く。
後を追う私の耳に、変わらないルイ様の声が響く…
「…ソフィー、君が初めて僕の名を呼んでくれた日を覚えてる…?」
【完】
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