魔王と白鳥

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舞踏会の事件、佳奈の出現、 そして華恋達が アメリカに飛び立って もう随分と時間が経った。 美冬と鷹也は結婚し家を継ぎ、 馨は大学に進学し政治を学び 真央はそれについて行き、 そして遼は大学の医学部に進学し坂下総合病院で少しずつ 勉強を重ねている。 ちなみに私、 竜宮舞白(タツミヤマシロ)は……… 「……ふぅ」 現在夕食の準備を終えた所だ。 ちなみに、二人分。 現在時間は午後6時半。 「そろそろかな……」 後ろで一つにしていた髪をほどき時計を確認して薄ピンク色の 可愛らしいエプロンを脱ごうと 背中のリボンに手を伸ばした瞬間、玄関のカギが開く音が響き ガチャと扉の開く音がした。 帰ってきた、と思い エプロンを外すのもやめ パタパタとスリッパを 鳴らしながら玄関に走る。 広いリビングの扉を開けた先は すぐ玄関、その玄関から 入ってきた人物に私は背筋を 伸ばし小さく頭を下げながら 「おかえりなさい」 と言った。 玄関から入ってきた人物…… 坂下遼(サカシタリョウ)は きちんと結ばれたネクタイを 片手で緩めながら 「ただいま」 と靴も脱がずに そのまま私を引き寄せてくる。 抱きすくめられた私は 何をするでもなく そのままじっとしていた。 この場合、力で勝てないから 遼が離してくれるのを 待つしかないのだ。 暴れたらそれこそ大変、 悪魔……いや魔王の 頬笑みが待ってる。 そしてその後殺される。 その恐怖を知っているからこそ 動かない……いや、動けない。 遼が離してくれたので、 私は遼が着ていたブラウンの ロングジャケットを脱がす為 肩に手をかけ、黒い遼の鞄を 手に持つ。 そしてリビングに行こうとした、が引きとめられて行けなかった。 「……なんだ」 左腕を掴まれて 引きとめられたので怪訝に思い、振り向くとそこには満面の笑みの遼が。 こういう時は危険。 コイツ、何か企んでる。 「いつもの、 やってくれないんですか?」 「……は?いつものって何だ」 「ほら、おかえりのキスを」 「おいコラ待て。いつ私が そんな事をやったというんだ。 今までで一回も やった事無いだろうが。 誤解を招くようなセリフを吐くな」 私達の言い合いも口の悪さも健全。 、
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