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それ以来、パーティー会場内で伊集院一家に会う事もなかった。
あの後遼は、表面上は再び元に戻り、直樹も普通にパーティーを楽しんでいた。
一般家庭育ちの為か、所々で的外れな事をして遼を呆れさせていたが、特にこれといった大きな問題もなくパーティーは終わった。
パーティー会場を後にし家に帰るまでの無言の車内、運転をする遼の真横で舞白は左下を見ながら身震いをしていたが。
「着きましたよ」
遼の声にハッとする。
どうやらぼうっとしてしまっていたようだ。
明らかに不機嫌そうな遼に促され舞白は車を出て、遼に手首を掴まれながらマンションに入っていった。
フロント、エレベーター、通路と、ずっと無言のまま歩く二人。
いつも通っている道なのにもかかわらず、舞白には部屋に着くまでの道のりがいつもの数倍長く感じた。
手首を持つ遼の背中は明らかに不機嫌だ。
完璧に怒っている。
これは本気で、殺されるかもしれない。
そうこうしているうちに部屋に着いた。
遼は慣れた手つきでポケットから鍵を取りだし黒色のドアにある鍵穴に挿す。
舞白はただなすがまま遼に引っ張られるだけで、引きずられるようにして玄関に小走りで転がるようにして入った。
「りょ、遼……っ!」
掴む手の痛さに舞白は声を上げるが、遼は振り向く事も手の力を緩めることもなくただ進んでいく。
遼は舞白を引きずったまま玄関から真っ直ぐ突き当たりにあるシックな黒い扉に手をかけた。
そこは舞白と遼、2人の寝室。
遼はその部屋の中に舞白を投げ込むように押し込み、後ろ手にドアを閉め鍵をかけた。
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