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花田が現れて数日が経つ。
いい加減僕もこの不可解な現象に慣れ、受け入れるようになっていた。
『那智くん、那智くん』
「あ?」
『めぐって呼んでっ』
「は?お前何言ってんの?」
花田が小さく唇を尖らせる。
『だって那智くん私を呼ぶとき「おい」とか「お前」とかしか言わないじゃない?それって付き合ってる間柄どうかと思うのよね……』
「くだらね……」
『くだらないとは失礼なっ!』
拳を振り上げて怒った素振りを見せる。
「暴力反対」
僕は花田の髪をくしゃくしゃっと撫でて笑った。
花田も笑った。
『那智くん好きだよ』
眉を寄せてつぶやく。
喉の奥がつんとした。
「お前……いつまでここにいるんだ?……お前…死ん……」
『那智くん』
間髪を入れずに花田は口を開いた。
しばらくの沈黙。
『私のこと…嫌い?』
そんなことねぇよ。
言ってしまえば簡単だったが、僕はそれをどうしても口にすることができなかった。
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