お葬式にいけない

2/2
前へ
/32ページ
次へ
 私は彼にもらった婚約指輪をじっと見つめていた。一粒ダイヤはわずかな光のなかでも光を反射して内側から輝く。  「永遠じゃなかったの?ずっとって言ったじゃない」 部屋の明かりをつける気力もなくただ涙を流していたら、不意に明かりがついた。母親が立っていた。母親は私に近づいて膝をつき、私の頬に手を当ててこう言った。 「お葬式、行くのやめておきなさい。忘れられなくなるわ。まだ若いのよ。次の幸せのためにも、お葬式は行かずにおきなさい。あなたのためよ」  私は母親に彼からもらった婚約指輪渡してこう言った。 「預かってて…」  そのとたん涙が一気に溢れだした。母親が私を抱きしめたら、私は声を出して泣くことを、ガマンできながった。  28歳だった。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加