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例えば、人生というものについて論じるとしよう。
人生と一重に言っても人の数程もある。
一人一人、違う。同じなんて有り得ない。有り得るわけない。
充実した人生の者もいれば、そうでない者もいる。
そして、自分自身をそうでない者の内訳に入れて考えている青年がいた。
齢は18そこそこで何を言うか、と思われるが、それも納得できる理由があった。
病気、病魔。
青年の身体を蝕んでいる。いつ命が尽きるかは分からない。
その為に、青年は若くして達観した見識を持っていた。
周りの子供達とは違う立ち位置にいたのだった。
その青年の名前は防人隆也(さきもりたかや)。
その土地の地主の一人息子。
彼は自分の立場が嫌だった。
だから彼は、幼い頃からよく家を抜け出す。病気だから安静にする為に母屋とは離れた場所に自室を設けられたのが拍車をかけた。
なにはともあれ、彼はよく家を出ていた。
と、言っても近くの山林を散策するていどなのだが。
だけど彼はそれだけでも満足だった。いつも自室からの人の手で造られた庭を見ていた彼にとって、木々に生い茂った景色は新鮮そのものだった。
そんな中、彼は出会った。出会ってしまった。
山の中で、一匹の三毛猫に。
それは、幼い頃の記憶で淡い思い出。
ただの、昔話だ。
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