青年と三毛猫のミケ

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夜の山。 うっそうと茂る木々の中を、影が縫うようにして跳ね回っていた。 その影は小さなものだが、力強い跳躍を見せている。軽く数メートルは跳んでいるだろう。 その影は猫のようで、闇夜に妖しく光る両の瞳がそれをあらわしている。 その猫はいっそう力を入れ、跳び上がると、一際高い一本の木の頂まで駆け上がった。 しかし、その姿は猫のものでは無かった。月明かりにあてられているその姿は女性の姿そのもの。 成人ほどの綺麗な女性。 彼女は木の上から地主の屋敷を見ていた。ただ、見つめているだけ。 しばらくすると、身軽に木の頂から舞い降りた。 かと思えば次の瞬間には猫の姿になっており、何かを捜すかのように夜の山の中へと消えていった。
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