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翌日、隆也は蔵の書物をこっそりと持ち出し、自室の前の廊下に、庭に足を投げだし座って読んでいた。
なんでも、防人家というのは代々この地を守ってきた一族らしい。そんな事が書かれた本を数冊読んだところで、彼は読むのをやめた。
これ以上読んでもつまらないと思ったからだろう。
事実、隆也は半信半疑で、自分の両親を見ていて、そういうものとは無縁のものだと感じたからだ。
だが、隆也は信じないと言い切れはしなかった。
昔、隆也がずっと幼い頃。隆也の祖父が不思議な力を持っている事を知っているから。
有り体に言えば、祖父は妖怪といった類いのものが見えたらしいのだ。
らしい、というのも、祖父はよく何かと話していた。
とにかく、そういった前例があるので、隆也は無い、とは言い切れなかった。
ふと、隆也は背後に気配を感じたので振り返った。
部屋の中に、女性がいた。
腰辺りまで伸ばした髪は綺麗な栗色をしている。
雇った人が着る着物を着ているあたりを見て、隆也の母親が雇った新しい隆也の世話役だろう。
しかし、隆也は興味がなさそうに、再び視線を庭の風景へとうつした。
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