0人が本棚に入れています
本棚に追加
「さてと、やりますか」
キリサキは割合ゆったりとしたダウンジャケットの胸元から、カトラスと呼ばれるような片刃剣を取り出す。
どこにしまっているのか、無数の刃物を使って敵を切り裂く戦闘スタイルがキリサキという愛称の由来だった。
『Gsysaaa!!』
キリサキの敵意を感じてか、交差点の各所に蠢くスライム達が戦闘体勢を取る。
「~~♪~~♪」
体の一部をスパイク状に変形させ、まるで槍衾のような陣形を取るスライム達であったが、キリサキは臆することなくスライムの群へと突っ込んでいった。
「相変わらず……並外れてるわねぇ」
キリサキが交差点でスライム相手に無双を繰り広げている様子を、地上数十メートルの高みから見下ろしているコート姿の女がいた。
女が立っているのは交差点に隣接するビルの一室であり、そこの窓からは交差点の様子が手に取るように分かった。
「右から五体来るわよ」
女の言葉に反応して、キリサキは右へと牽制を加えるようにナイフを投てきする。
彼女はキリサキとチームを組んでいる掃除屋であり、左手で保持しているノートPCによる戦術分析を行い、その結果を下で戦うキリサキに伝えていた。
『おいキョーコ……敵の動きがおかしい』
ヘッドセットから響いてきた相棒の言葉に、女――――キョーコは形のよい眉をしかめる。彼女の戦術分析は、かなり最悪の分類に入る結果をたたき出していた。
「コウ、すぐに撤退するわよ。レベルCが来る」
キョーコの緊迫した声がガランとしたオフィスの中に響いた。
最初のコメントを投稿しよう!