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日本各地、どこでも走っているような黒い軽自動車。その運転席で森は唐突に口を開いた。
「俺、アンタのこと嫌いですよ」
「森君。そういうことはさ、思っていても口には出さないものだよ」
窓の外では、夜景が流れるように過ぎていく。
車に備え付けのスピーカーからは、森の趣味であるロックバンドのメロディが響いていた。ライブ音源らしく、所々で観客の嬌声が入り込んでいる。
助手席に腰掛けている未来は、そんな音を聞きながらライターを弄んでいた。形の整った綺麗な指。キチンと手入れされている爪の先で、未来はライターを点けたり消したりしている。
ロックバンドの演奏に混じって、カチ、カチっと、定期的なライターを点ける音が車内に響いていた。
運転席の森は、横目で未来のそんな様子を確認すると、再び口を開く。
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