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それは現代を生きる人間には、理解できない言葉であった。
文字にすることさえ不可能であろう、失われた古代の言葉であり、神代との契約の言葉。
数千年の昔より守られてきた神聖な血は、この現代になって驚くべき子を産み落とした。人でありながら、限りなく神々に愛された存在。
人の皮をかぶった神話の住人。
未来の周りを、突如として現れた炎が躍る。まるで自らが選ばれたことが光栄で堪らないかのように、炎は空き地を縦横無尽に駆け回った。
数多の神々を自由に使役できる少女。
魑魅魍魎が跋扈する魔都、東京において唯一圧倒的に人外を駆逐できる人類の最終兵器であり、英雄と崇められる存在。
しかし、ここ数ヶ月彼女を間近で見てきた青年は、吐き捨てるように言う。
「あいつは、ただのバケモノだ」
見た目は大人しそうな十代の少女。しかし中身は、人類にとって替えがたいバケモノ。
人と言うには、あまりにもアレは人の道を踏み外しすぎている。
森は未来を保護というか所有する機関の命令で、彼女の行動をサポートすると同時に監視していた。
機関から森が受けた至上命令は、未来が人類を裏切るようなことがあれば、即座に斬ること。
畜生。そりゃぁどういうことだ。
いつか斬らなければならないのなら、いっそバケモノでいて欲しかった。森は彼女をバケモノだと信じようとしている
だけど彼女は、どう見ても純粋な少女にしか見えないのだ。故に森は、未来が嫌いだった。
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