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「わりぃ、リアン大丈夫か?」
クロノスはふらつきながら、立ち上がったリアンに駆け寄る。
「いくらなんでも、最上級を詠唱ありは酷いよ」
「悪かったよ」
ぺたりと座ってしまっいながらも、頬を膨らますリアンにクロノスは謝罪する。
「まあ、これでこいつらも諦めるな」
腕を組み、倒れた4人を見る。
「仕方ないよね?でも、コウヤとミリアは教えるんでしょ?」
「まあな。ランとリサはお前が見るか?龍騎士サマ」
「冗談じゃない。この子たちは僕じゃ無理だよ」
クロノスの言葉を本気にしたリアンは、全力で拒否する。
それを、クロノスが一笑し嘘だと告げる。
「こいつらは、クラウディア有力者あたりか?」
「そうだね。僕らじゃ知識が偏るし」
クロノスは頷くだけ。
リアンたちが教えない理由。それは、2人は長く人を殺してきたからだ。
2人が教えると、それは戦争や武力行使に対し、いかに相手を屈服させ殺すか、の一点に集約されるからだ。
コウヤたちにはその手を紅に染めて欲しくないが故である。
「矛盾してるよ。強くなってもらいたい。けど、人は殺させたくない………だから教えないのに、コウヤとミリアは特別扱いするなんてさ」
クロノスの言葉の端々に自嘲が伺える。
リアンも何も言わないが、同じ気持ちなのだろう。表情は暗い。
そんな暗い気分を払拭するかのように、クロノスは手を合わせる。
「さて、こいつらを部屋に戻すか」
コウヤたちの下から魔法陣が現れる。
「【瞬転】発動」
来たとき同様、クロノスの魔法でみんな音もなく姿が消えた。
「俺は任務があるから本部に行く」
クロノスは髪の色を戻し、真珠色のローブを空間から取り出して纏いながらリアンに言う。
「僕は部屋に戻るよ」
「そうか」
カチリ
クロノスは眼帯を外し、仮面をつける。
「じゃ、またな」
「うん。いってらっしゃい」
リアンとクロノスはそこで分かれ、魔法を使うと部屋は誰もいなくなった。
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