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翌日
クロノスは昨夜の任務が思いのほか時間がかかり、部屋に戻ったのは朝になってからだった。
「………眠い……でもこのままはやだな……」
かぶっていたフードと仮面を外し、自分を見る。
真珠色のローブは魔物の返り血や泥などで汚れ、腕や頬にもある。
「……風呂入るか」
のっそりとローブを脱ぎ捨て、空間に放り込む。そのまま風呂に入る。
コンコンコン
ノックする音が聞こえたが、今のクロノスに聞こえているかは甚だ疑問だ。
コンコンコン
尚もノックは続き、次第に荒くなっていく。
外にいる人が、痺れを切らし思いっきり叩こうと拳を振り上げると………
《何のようだ。うるさいなぁ》
クロノスの声が頭に響いた。
「俺だ、コウヤだ」
ノックしていたのはコウヤだったらしい。
《何だよ……俺今風呂だから、上がって待ってて》
カチャリ
クロノスがそう言うと、鍵が開いた音がして、コウヤはおずおずと中に入る。
「お邪魔しま~す」
コウヤはとりあえず、ソファに座って待っている。
数分後、乾いているが髪を下ろし、ラフな格好でクロノスが出てきた。
「ふぁ…わりぃ、待たせた」
「いや、俺もいきなりきたからお互い様だ」
クロノスはどっかりコウヤの向かい側に座る。
「で?今日は何?先に言っとくが俺が教えるのは人型のやり方だけだぞ」
あらかじめ、聞かれるであろう事を先に答える。
「あ、それは………わかった」
コウヤの返事から、クロノスの当ては外れ、忘れていたようだ。
「それを聞きに来たんじゃないのか?」
「う、ん………実はクロノス、ダンス教えて」
「はいぃ?何でいきなり。しかも俺が?」
まさか、そんな事を言われるなんて思っても見なかったクロノスは驚きを隠せないようだ。
「いや、昨日部屋で気がついた後リサにパートナーを頼んだんだ。その時、ダンスちゃんと踊れないと恥かくからって」
「ほうほう……それで?」
クロノスは身を乗り出し、面白そうに聞いている。
「つい、いつもの癖で見栄を張っちまったんだ……」
「ちなみに何て?」
「『恥かく所か、俺と組めて光栄に思うだろうよ』って………でも、俺ダンスは踊れない以前に全くわからないんだ……」
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