魔法の修行とダンスの修行?

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「黙れ」 急にクロノスは、今までとはがらりと雰囲気を変え、語気には鋭さを感じる。 冷たいオーラが漂い、ミリアはビクッと身を竦める。 「甘えるな。お前等が教えろと言ったから付き合ってやってるんだ。少しは自分の頭に頼れ」 木にもたれて座っているのに、クロノスが大きく、怖いと思ったミリア。 普段は温厚なクロノスからは想像も出来ないくらい、怒気を露わにしている。 あまりの威圧に、声が凍りつく。 「……出来るようになったら呼べ」 ぶっきらぼうにクロノスが言うと、ミリアは首を縦にふり、了承の意を表現する。 その後、ミリアは逃げるように練習に向かった。 『………随分イラついてるな』 耳に声が刺さる。 《………炎か》 心話で声の主に返事する。 相手は炎蹄だ。呼びやすいように“えん”と呼ぶ。 『あれは言い過ぎじゃねぇか?』 《………》 炎蹄のたしなめに口をつぐむ。 確かに、言い過ぎたと思った。だが、勝手に口が動く……無性にイライラした。 『……あいつと比べるからだ。バカ主が』 《……うるさい》 呆れた様子の炎蹄を一蹴するかのごとく、クロノスは言い捨てる。 しかし、その表情には先ほどより僅かに優しいものになった。 「さて、コウヤの方を見てくるか」 《そうしろ》 クロノスは勢いをつけて立ち上がると、コウヤを探し始めた。 『……ったく……世話のかかる主だぜ』 炎蹄は小さく呟く。 クロノスが冷たく当たったのは、ミリアが羨ましかったからだ。 今は亡きクロノスの恋人が、生きていたなら優れた魔法使いになったろう。 だが、それは叶わぬ願い。だからこそミリアには妥協してほしくないのだ。
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