魔法の修行とダンスの修行?

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「さてと、厄介な頼みを聞いてやりますか」 クロノスとコウヤのいる場所。それは、小さなあずまやだった。 クロノスは片手を腰に当て、赤面しているコウヤを見る。 「と言っても俺がダンスを教える訳じゃない」 「は?じゃあ誰が……」 「この人さ。ミナさん」 クロノスに呼ばれて出てきたのは、先日クロノスの前にひざまずいた女性、タイムだ。 クロノスは自分の使い魔を知られないように、名を偽って呼び出したのだ。 「初めまして。クロノスから話は聞いています」 優雅に腰を折る姿は、まるで貴婦人。その美しさと美貌にコウヤは口を開けたまま魅入ってしまう。 「この人は母さんの友人だ。ミナさん、このアホ面してるのがコウヤ。こいつに社交ダンスを教えてやって?」 「構いませんよ。早速始めましょう」 ふわりとタイムことミナが微笑む。 コウヤは完全に鼻の下が伸びている。 「………火球」 ボワッ 「ん?うわー!あっちぃ!」 何時までもコウヤが元に戻らないので、クロノスは火の初級魔法をコウヤの頭に放つ。 小さな火がコウヤの髪を焦がしてゆく。 「あちあちあち!みずー!水水!」 バタバタ駆け回り、噴水へとダイブする。ようやく火が消えた。 「……ばーか」 一部始終を見ていたクロノスは半目でコウヤを睨む。その隣には、困り顔のミナ。 「やりすぎでは?」 「あいつだからいいの」 「まあ………大変ですね」 苦笑していると、噴水から上がり、びしょびしょのコウヤがやってくる。 「酷い……髪がなくなった……」 確かに、コウヤの髪が焦げてチリチリになっている。 「自業自得だ。いやならいいんだぜ?止めても。ミナさんも俺も暇じゃないからな。 本番でリナに呆れられる姿が目に浮かぶ」 ニヤリと意地悪い笑みを口に貼り付けるクロノス。 コウヤが有無を言えないのを良いことに、性悪だ。 「ぐぐぐ……やらせて頂きます」 嫌々ながら、コウヤは頭を下げるとクロノスは更に笑みを深くする。 「わかればよろしい。ミナさん、後頼んだ」 「承りました」 ミナの返答に一つ頷き、クロノスはその場を離れる。
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