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「あいつはどこ行くんだ?」
魔法で服を乾かし、髪を元通りにする。
「私達に気を使っておられるのです。クロノスがいたら気が散るだろうとの配慮でしょう」
「あいつがぁ?まっさか~」
普段のクロノスは温厚だが、意地悪な一面がある。特にコウヤに対して。
コウヤは怪訝そうな顔で唸るが、ミナが話題を変える。
「では、始めましょう。まずは、基本的な動作とたち位置を。
社交ダンスは男性が常に女性をリードせねばなりません。コウヤさんには“紳士”になってもらいますよ」
満面の笑顔でミナは説明するのに対し、コウヤは若干頬が引きつる。
自分がリサをリードする………考えただけでも赤面する!
「コウヤさん?」
黙って赤い顔をしているコウヤを心配して、ミナが顔を覗き込む。
「大丈夫ですか?どこか具合でも?」
「え、あ、いや。大丈夫です。よろしくお願いしますね」
手を激しく振り、元気であることを示す。そして、教えを乞う姿勢になる。
ミナは一つ頷き、コウヤにダンスを教えて始めた。
足の運びや、ターンの仕方、曲によって微妙に異なるステップの踏み方などをミナは事細かに教えていく。
日はすっかり陰り、空には星が輝き始める頃、やっとダンスの修行が終わる。
「この続きは明日やりましょう」
ミナが言うと同時に、コウヤはその場に座り込む。
「つ、疲れたぁ……」
コウヤは汗で額に張り付いた前髪を、うっとおしげにかきあげ、荒くなった呼吸を整える。
体術の授業や、魔法の授業よりよほど疲れる……
「お疲れっ!明日も同じように、午後からやるならな!」
終わる頃合いを見計らって、クロノスがやってくる。
「明日の朝は筋肉痛だろうなぁ」
コウヤはボソッと呟き、クロノスと共に部屋に戻る。
案の定、翌日のコウヤは全身筋肉痛でもがいていた………
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