名前と記憶

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一気に地面に叩きつけられた青年は、 そのまま気を失ってしまったみたいです 唖然としていたエアロガですが、はっと我に還りました 「エアロ、無事ですか?」 そう彼女に優しい声をかけたのは、クロラではなくてユキヤでした その容姿は今は巨大な白竜ではなく、エアロガと同じリミカル ーこの世界で魔法使いを指すー の姿をしていました 長身でほっそりとしており、その真っ白な髪は竜の姿のときと同じです 目はちょっと釣り上がっていて大きく、紫色をしていました なかなか端正な顔立ちです 「うん、どこもケガしてないよ」 さっきの展開にドキドキしていた胸をおさえつつ、努めて平然として答えました 「しかし、どうして人間がこの森に入ってこれたのです? そしてわざわざ血まみれで、私の湖の前で倒れてたりして」 最後の方の口調がちょっと険しくなりました 「あたしにもわかんない ヴァイオは入口にも何の異常も無かったって言ってたよ?」 入口の管理はヴァイオがしています 人間が入り込もうものなら、たちまち彼が食べてしまいます 「醜い血をみるのなんて、ごめんです エアロ、その人間をどうするつもりです?」 なるべく優しい声で、ユキヤはエアロガに問います エアロ、とはエアロガじゃ長いからと彼女が親しい生き物達に呼ばせている名前です 「うーん… 一応祭壇に連れていってみる」 ちょっと困った顔をしながら、しゃがんて青年の顔を覗き込みました こちらもなかなか端正な顔立ちをしていますが、今は苦痛に顔を歪めています 息は荒く、苦しそうです 早く連れていかなきゃ そう言って、彼をよっこいしょっと持ち上げ、クロラの背に乗せました そして自分もその背にまたがります 「じゃ、またねユキヤ 湖の周りを汚しちゃってごめんね」 申し訳なさそうな顔をして言い、ユキヤに手を振りました 「どうかお気をつけて」 と、彼は笑って返しました
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